――ラボの地下で、原因不明の爆発が発生した、まさにその瞬間――
その現場に居合わせた少年たちは、悔しげに呟いた。

「ぼくたちは間に合わなかったんだ……!」と。

彼の名は『天川夏彦』。
傍らにいる少女たちの名は、
『鳥羽ましろ』と『三ノ宮・ルイーズ・優衣』。
市内の高校に通う平凡な学生であるはずの彼らは、その日なぜかラボを訪れていた。
ある目的を果たすため、厳重な警備をかいくぐり、ラボの内部にまで侵入したのだが――
そこで発生した『事故』に、巻き込まれてしまったのだ。

爆発が発生し、炎は急速に燃え広がり、ラボ内は阿鼻叫喚の坩堝となる。
夏彦たちは恐怖に震えつつも、事態を収束するため駆け出す。
だがその直後、彼らは施設内で思いもよらない人物に出会う。

『琴乃悠里』――夏彦の幼馴染にして、同じ家に暮らす同居人。
彼女は訳あって、家から外に出ることができないはずなのに。
戸惑いながらも、夏彦は彼女を連れて逃げようとするが――
悠里は夏彦を見つめ、謎めいた問いをかける。
「どうして来てしまったの……?」

その言葉が引き金となり、夏彦は過去を鮮明に回想する。
事故が発生する6日前から、今日この瞬間までのいきさつを。
いや、それはただの回想ではない。
まるで時間を遡り、もう一度今日までの6日間を
やり直しているような、奇妙な感覚……!

その回想は、夏彦たちの脱出劇と並行し、たびたび繰り返される。
6日前、5日前、4日前、3日前……
そして今日まで、 徐々に回想は現実の時間に近づいてくる。
しかも回想するたびにそれらの記憶は、
微妙に、しかし確かに『変化』するのだ。
それまで気にも留めなかった事実が克明に想起されたり、
あるいは誰かに対する印象が劇的に変わったり……。

なぜこんな事が起こるのか? それは夏彦自身にもわからない。
だがその変化していく記憶の中には、夏彦たちが生き延びるためのヒントが無数に隠されていた。
戸惑いながらも夏彦は、記憶の中からヒントを拾い集めていく。
何者かの作為的な意思を感じながらも。

――そして全ての回想を終えた時、繋ぎ合わされた記憶の中から、
様々な答えが導き出された。
なぜラボで事故が発生したのか。
なぜ夏彦たちがそれを未然に知りえたのか。
そしてなぜ夏彦が、このような奇妙な回想を繰り返しているのか……!

だがそれは同時に、気づきたくなかった残酷な真実を、夏彦に突きつける。
『皆が揃って脱出する事は、決して叶わない』
それを知ってしまった時、夏彦が選ぶ決断は――!

『現実』と『回想』の交錯する、2重構造の脱出劇。
今を生き延びるため、彼は何度でも過去を繰り返す。